青い夏の夢を見る

日記と読書備忘録

『Unnamed Memory Ⅰ~after the end-Ⅱ』古宮九時/電撃の新文芸

 魔女と王が世界に挑戦する、名もなき物語。

 面白かった!!

 最初から世界最強の2人なので、「まあこの2人ならどうにかなるんやろな」と思ってしまうのは仕方ない。でも最強の2人だからこそ展開できるストーリー構成だったので、全く退屈しなかった!

 世界の謎も気になってしょうがなかったので、ぐんぐん読みました。なにより二人の会話が面白い。オスカー、私、お前のこと好きになっちゃったよ。

 

 以下、感想です。物語全体に大きな仕掛けがあるので、未読の人で読む予定がある人は読まないでください。

 

オスカーのこと好きになっちゃったよ

 こんなんオスカーのこと好きにならない方がおかしいでしょ。ただ強いだけじゃなくて王としての器もある、器量も良い。そして恋愛に積極的(?)。嫉妬を嫉妬と潔く認める男、え~ん、好きだ~!

 オスカーが躊躇いもなくハニートラップをし始めたシーンで、マジて手を叩いて大喜びしちゃった。なに? マジでズルくない?? 目的のために手段を選ばない男、本当に好き。大陸最強戦士ってだけでもお腹いっぱいなのに、それ以上盛られると私は困っちゃうよ。ありがとう、ありがとう……。

 

 女性側の陥落を待つ小説が久しぶりだったので楽しく読みました。オスカーに靡かないティシャーナ、すごいね……。二人とも人生に余裕がありすぎるので、「この二人が恋愛という感情にめちゃくちゃになるところが見てぇよ……」と私はむせび泣いておりました。

 ティシャーナの新従者たちに「ざんねんざんねん! お前たちの主人はもうめろめろなんだよ! オスカーという最強の男に」とマウントを取る傍観者のわたし。

 

待って、置いてかないで、私の心を

 運命の転機は3巻ですね。あはは。

 先の続刊のあらすじを読んでしまっていたので、薄々展開は予測していたのですが、3巻終わりは案外幸せで(そうか?)安心しました。何も成せぬまま絶望のまま時代が終わるのかと思っていたので……結婚できて、平和な時間も歩んでくれて嬉しいよ。束の間ですが。

 残されたティシャーナのことを考えるとかなりしんどいけど、実際は残された彼女なんて存在しないってことだよね。二人が分かれた瞬間から二度と再会できないことが確定していたの、哀しいね。

 当時読んでた時のメモ:『私が好きになったオスカーもいなくなっちゃったってことだよ 読むのやめようかな』

 

 私がそんな気持ちになっていても、物語は進んでいきます。

 ここで読者は発狂しますよね。私もしました。私とティシャーナを置いてけぼりにして時が進んでいくのやめてくれん?? 悲しいだろうが。私だけをあの時代に置いていくな。

 私は二人が過ごしてきた時間を記憶しているのに、他でもないこのUMの世界の人たちが誰も何も覚えてないので「???」の気持ちになります。小説内の人たちが覚えてないのに、なぜ、私だけ覚えている? いったい私は何をみた?

 新時代の始まりは毎回「ちょっと待て前巻のお前らのこと忘れられないよ……」と途方に暮れているけど、中盤もすぎると「今巻のお前らも最高だよ!」になってしまうんですよね。ちょろい。前の時代では見れなかった二人の関係性、これはこれで最高。

 

二人は最強! ……基本的には

 定期的に「しんど……」となるのですが、オスカーとティシャーナは二人とも最強なんだよね。基本的に。実にハラハラ感のない主役たちである。だからこその物語展開なんですけど。

 はらはら感はないけど、二人の掛け合いが面白いし過去や謎も気になるのでぐんぐん読めます。力を持っているからこそ、立場があるからこその葛藤や、主人公たちの選択に注目しちゃう。壮大な話だ……。

 

 そして時代が変わると彼らは弱体化してたりするので、少しはらはらするようになる。このバランス絶妙だよね~。本当にすごい物語だ。

 子どもっぽいティシャーナにつられて、余裕がなくなるオスカーも見ることができて最高でしたね。2巡目、オスカーがわざとすれ違うように仕向けてるの、読者としてはつい「欲望のまま手に入れろ!」って思ってしまうけど、本当にそうされたら解釈不一致なんだよね、王であるオスカーが好きなので。

 オスカーが男前すぎる。20歳そこそこにして人格が完璧すぎる。弱みがない、こわ……。一方のティシャーナは時代によりますが恋愛事に弱くてかわいいですね。少女のような恋をしたティシャーナの果て、見たかったなぁ……。

 

 余談ですが、小話がどんどんストーリーとして繋がっていくの、WEB小説だなぁと感じました。

 

after the end……ここからが本番!

 After the end、ということですが、この巻から続く話が、もしかしたら私が一番読みたかった話なのかも。きちんと刻まれてゆく世界、安心して読めるね。

 ラジュの破壊力、すごい(語彙力)。普段オスカーが押せ押せだから、ティシャーナが押す側になるの、本当に、本当に楽しい。ちょろい人間だから、ラジュのこと忘れられなくなっちゃった。ラジュ……もうお前は現れないのか?? 少年らしい姿をもっと私に見せてくれよ……。

 

 オスカーの執着もみれて大変美味しかったですね。取り残されたオスカーが空っぽになってるの、本当に興奮しちゃった。人間のときは平気だったのに……。

 ラザルのような関係の存在が、いつの時代にもいたら良いのだけれど、当の本人たちがそんな存在を望んでないんですよね。望んでないというか、望んじゃだめだと思っているというか。どこまでも一対。哀しくなってきたな。

 

 新しい関係になるたび、その二人を気に入ってしまうので、「やだやだもっと見せて~(泣)」になってしまう。いつもの二人も勿論好きだけど、長い年月でただ一瞬の、刹那的な関係を拡大して見ていたいよ。実直に恋するリースヒェンとオスカーが営む生活の一から百まで見守りたかったよ。

 

まだまだ続くと信じて

 はい、お互い一回ずつターン来ましたね。ということは次は同時ターンでは!!?

 真っ白な二人の出会いが見れるフラグ、立ってる気がする。そんなん見たいに決まってるでしょうが。こちとら、二人の再会を見るために、違った関係性を見るためにこの物語を読んでいるといっても過言じゃないのよ。

 

 続編を楽しみにしたいと思います!

 あ~、壮大で最高の物語でした。