青い夏の夢を見る

日記と読書備忘録

『転生佳人伝 籠姫は二度皇帝と出会う』三川みり著/角川文庫

 前世で暗殺された皇帝の籠姫だった転生主人公が、今世こそは皇帝を守り抜く!と決意して宮廷内の陰謀を暴くお話。

 『シュガーアップル・フェアリーテイル』シリーズを書いた三川みりさんの小説です。

 

 大ファンです。

 

 大ファンといいつつ、銀砂糖師シリーズはまだ読破しておらず長らく積読状態なのですが(読みたい気持ちは大いにあるが何せ冊数が多い)、一巻完結(?)のこちらの小説ならささっと読めるのではないかと思い、手に取りました。

 

 主人公が前世に囚われ過ぎているので、序盤はもやもやしながら読んでましたが、最後に「これは主人公の成長物語だったんだ」と気付いて納得しました。二巻以降続いていれば、また違った印象になった気がする……! 今世の皇帝がひねくれた性格をしていて大変好みなので、この先どんな皇帝になるのか気になります。

 

 以下、感想になります。明言は避けていますが、ネタバレもあるので読了後推奨です。

前世に囚われ過ぎている主人公

 主人公が前世の皇帝に巨大感情を抱いている、だけなら良いのですが、その巨大感情を今世にも持ち込んでいます。一方、皇帝は前世のことを全く覚えていないので、まあ拗れる拗れる。

 転生が当たり前の世界なので、前世の気持ちを大っぴらに持ち込めるところも拗れる要因の一つな気がします。

 

 主人公が今世の皇帝を通して前世の皇帝を見ており、そのことに悪気がないので皇帝がひたすらに不憫。前世と今世を比べて勝手に失望されるなんて!

 そして「私を信じろ」という割には、ふつうに皇帝に嘘をつく主人公。羞恥心からきた些細な(?)噓ですが、私のフラストレーションは溜まります。笑

 

 事件の調査をしているときも、「え、そこ、気付かないの!?」と思うこと、多々ありました。伏線が分かりやすいのに、主人公が全く気付かないので、読み手とのギャップが生まれるんだな……。

 

本性を隠す皇帝と察しが悪い主人公

 と言いつつも、皇帝もなかなか良い性格しています。疑い深くて本音をはっきりと表現せず、のらりくらりと皇帝の業務から逃げています。

 この本音を言わないひねくれた皇帝と、正直者で察しの悪い主人公が主役なので、まあ、すんなり上手くいきませんよね。

 でもこのひねくれている今世の皇帝、わりと私好みです。へへっ

 

これは主人公の成長物語

 前世に囚われている主人公ですが、終盤の方で前世と今世の区切りをつけてから、良い方向に動き出しました!

 今世を生きだした主人公を見て、この物語は主人公が前世を吹っ切るための物語だったのか、と納得しました。そう思った途端、すらすら読める!

 最近では最初から完璧な人間が主人公の小説も多いですが、この小説は主人公の成長に重きを置いているのかな~と感じました。

 

 だからこそ続きがあれば……! という気持ちです。吹っ切れた主人公と、信頼できる味方を得た皇帝が、この先どのように宮廷内で戦っていくのか。前世の皇帝の暗殺事件については、結局何も解決していないし……。

 前世の因縁は解決していませんが、主人公が過去から吹っ切れる物語として、まとまりをもって終わっていたと思います。

 

三川みりさんの作品、めちゃめちゃ積読している

 セールのときに三川みりさんの作品をアレコレ買ったものの、積読が溜まる一方です。

 読みたい気持ちはめちゃくちゃあるのに……!

 

 気持ちが読書時間に追いつかない!