80分の出来事しか記憶できない数学博士と、家政婦親子の穏やかな日常の話。
私が子供の頃、めちゃめちゃ流行ってた本。当時はあまり読書するタイプじゃなかったんですけど、そんな私でもタイトル知っていたので、「まじで名作なんだろうな……」と期待〝大〟で読みました。
結果、めちゃんこ面白かった! 泣いちゃう!
小さい頃からこういう教え方してくれたら、数学好きな子どもが増えるんじゃないか!?って思います。
でもこういう数字の美しさって、大人になってからの方が、しみじみ沁みるものなのかもしれない。
以下、感想になります。ネタバレもあるので読了後推奨です。
この話の優勝者はルートくん
ルートくん、何者ですか??
記憶が80分しか続かない博士に対し、苛立つこともめげることもなく、親に言われる前に自分で考えて言動し、怒っているときでさえ自分の感情を他者に分かりやすく言語化でき、何十歳も年が離れたおじいちゃんと友達になれるルートくん、何者ですか????
10歳? 噓じゃん。人格者過ぎる。
ルートくんが「(こういう理由で)怒ってるんだよ!!」って泣きじゃくってるところ、あまりにも感動して泣いちゃった。あんなに泣きじゃくって、思考するよりも先に感情が来ちゃってるのに、自分が何に怒ってるか言語化できる10歳児……。そして怒る理由が他人のためっていう……天才児??
ルートくんが大人すぎるので、2X歳の今の自分を恥じて泣いちゃった。まじで素敵な大人になるよ、ルートくん……。
しかも成長して20歳近くになっても、母親と二人で博士のところに遊びに行ってるの、本当にポイント高い。絶対モテますね。
博士も主人公も、ルートくんに負けないくらい素敵な人
博士の、ルートくんを子どもとして尊重しつつも、子ども扱いしないところが好きです。
子どもの話を、ずっと真剣に聞く。案外難しくないですか? 私なら、きっと途中で面倒になって、テキトーに答える瞬間があると思います。けれど博士はずっと真剣。すごい。
主人公も、博士との会話により、それまで縁のなかった数字に惹かれていってるのが素敵だなと思いました。
知らない分野の話を興味深く聞き、自分の中に受け入れて、会話を楽しめる人。それも才能だと思います。
美しい数字の話
こういう研究気質な話を読むと、やっぱり私は研究に向いてなかったなぁと感じてちょっと落ち込んでしまう。興味を持って、真摯に向き合えることができる人間って才能ですよね。私はできなかった。
博士の数字の解説が面白くて大好きです。こういう授業を受けたかった。
子どもの頃に読んでたら、もっと数学好きになれたのかな、とか考えてしまいます。でもそれと同時に、この物語に描かれるような数字の美しさは、子ども時代には理解できなかったかも、とも思います。
物語中でも、息子よりも母親の方が数字の美しさに惹かれていましたね。
読む人の年代によって印象が異なりそうな話
今の私は、「ルートくん、あまりにも人格者」と、ルートくんを見守る形で読みました。しかし、子ども時代にもしも読んでいたら、ルートくんの偉大さに気付かないかもしれないなぁ、と思いました。
子どものときに読んでなかったのが悔やまれます。もしも読んでいたら、どう感じていたのだろう。
せっかく大学まで数学を学んでいたから、もっと真剣に勉強すれば良かったな~。