青い夏の夢を見る

日記と読書備忘録

『ハケンアニメ!』辻村深月/マガジンハウス文庫

 アニメをこよなく愛する人たちの、お仕事奮闘記。

 ぐ、わー! めちゃくちゃ面白い! さすが辻村深月さん、私の肌に合いすぎる。

 

 これまで同著者の作品は、『ツナグ』、『かがみの孤城』、『スロウハイツの神様』、『鍵のない夢を見る』、『島はぼくらと』を読んだことがあります。どれも本当に面白かったけど、一番のお気に入りは『スロウハイツの神様』です。やっぱり自分の好きなことに全力を尽くす人間の話は面白いんよ……。

 『ハケンアニメ!』も、自分の好きなものを形にするために全力を尽くしている人たちの話なので、めちゃくちゃ好きでした。人と人とがどんどん繋がっていって、新しい道を生みだす物語、面白過ぎる。

 

 以下、感想になります。ネタバレ注意!

 

収まれ収まれ、私のキャラ読みの心

 私はお気に入り作家の作品はあらすじを読まずに読み始めちゃうタイプです。だから短編連作なの知らなくて、最初少しショックを受けちゃいました。王子と香屋子の1クールを見守る気でいたので……。それくらい一章時点で二人のこと大好きになってたので……。

 序盤を読んでいた時、(これから登場するであろう王子のこと、私許せるかな……)と不安になっていたのですが、全然許せました! ただし私は絶対王子と一緒に仕事したくない!笑 

 第一章で「なるほど、恋愛関係に発展はしないのかな……そういう関係も大好きさ」と、一旦、しぶしぶ、強がって受け入れた私ですが、最終章であんなこと言われちゃったら、恋愛強火の心が灯ってしまうってもんよ。香屋子が王子に振り回されていると思いきや、王子が香屋子に振り回されているところもあるようで、思わずにっこりしちゃう。

 悔しい。恋愛要素を軽率に喜んでしまう自分が悔しい。でも好き。

 

 とはいえ瞳と行城コンビも、和奈と宗森コンビも最高だったので、最終的には大満足しました。とういうかそれぞれの物語の絡み方が絶妙で、本当に最高だったよ……。

 

集結する天才たち

 どの話が一番好きかって聞かれると困っちゃうんですけど、やっぱり『軍隊アリと公務員』かなぁ。最後の『この世はサーカス』も捨てがたいけど。これまでの登場人物たちが集結するっていうのは、やっぱりわくわくしちゃうよね。全員集合のわちゃわちゃ具合が本当に好き。

 メインの二人が、最初から同じ方向を向いてないのも面白かった。徐々に気持ちを近付けていく様子が、良いなぁと思います。本気の相手が傍にいると、自分もだんだん本気になっていくよね。それが好意を持つ相手なら、なおさら。

 外と関わることが苦手な和奈が、自分から瞳に連絡して、宗森と瞳の縁を繋いでるのを読んで嬉しくなっちゃった。人と人とを繋ぐのはきっと宗森のが得意だけど、それでも和奈にもできるんだぞ!って、他でもない和奈に教えてやりたい。宗森が町の人から信用されているのと同様に、和奈も瞳や行城から信頼されているからね。

 

 第三章で瞳や行城が登場したとき、涙出そうになった。仕事ができる大人たち、かっこよすぎる。それはともかく、宗森繋がりでの王子の登場は全然予期してなかったので普通に驚きました。王子、友達いたんだね……。(大失礼)

 

なりたい自分になるために全力を尽くす人たち、眩しい

 瞳が『神様。』と縋るシーンが印象的。最高のシーンすぎる。

 有り余る幸せを受けて、形のない何かに感謝したくなるときなんて、誰にだってある。

 

 アニメというコンテンツが、好きで好きでたまらない人たちがいるからこそ成り立っている業界なんだろうなと思います。この作品はきっと、アニメ制作の比較的きれいなところをすくって描かれていると思うので、現実はもっと過酷でしょう。アニメを観る者として、本当に尊敬するし、ありがたいなぁと思います。

 こういうの読むとクリエイティブな仕事したい! ってなっちゃうな。私も架空の物語を愛している人間の一人なので。

 

きっと発刊時よりも〝オタク〟という言葉がアクセサリーになった時代だけれど

 今だって私は自分のこと「オタクです」って自称しにくい。対象がアニメやゲーム、漫画、小説だからなのか……、育った時代なのか……。「趣味は何ですか?」と尋ねられると困るやつ。いっぱいあるけど、人に言えるものがない!

 だからこそ王子の「好きなものを恥じるな(意訳)」という言葉に救われます。一人遊びが得意で、家に引きこもりがちだけど、それでも私はめちゃくちゃ楽しいよ。私だけは私のことを肯定していきたい。

「──生きろ。君を絶望させられるのは、世界で君ひとりだけ。」

 

─『ハケンアニメ!(マガジンハウス文庫)』辻村深月

 

 「休日は家にいました」と言うと「えー! 出かけないの?」とか言ってくる人、多いですよね。私だって何気なくそういう言い方しちゃう時、あるかもしれない……。人の好きなものを否定しない人間でありたいものだ。

 

辻村作品は制覇したい……が、いつになることやら

 「ハケンアニメ!」、開始数ページで「辻村深月だ!」になって嬉しかったです。まだまだ未読の既刊がたくさんある。辻村作品全制覇までの道のり、めちゃくちゃ遠いな~。ゆっくり読み進めよう。

 

 詳しく感想を書いている章と書いてない章がありますが、書いてある章は感想をメモってました。序盤はメモってなかった。記憶力が底辺なので、メモってないと書けないんだよな~。