青い夏の夢を見る

日記と読書備忘録

『烏に単は似合わない』阿部智里/文春文庫

 人間が烏に変わることができる世界での、愛憎まみれた后選びの話。

 途中まで「ふ~ん……」と、かなりのんびり読んでました。暇つぶしがてら。

 だけど途中から、もう先が気になりすぎて……! おもろすぎた。夜更かしして読んでしまったせいで、次の日の日中は終わってました。いい歳こいて……。

 でも楽しかったから、いっか!!!

 

 以下、ネタバレを含む感想になります。この小説を100%楽しみたい人は、読了後に読んでください!

 

特に特徴がない主人公

 大人気小説シリーズ! 対戦お願いします! の気持ちで読み始めました。だけど、「あれ……? 退屈か……?」となってしまった序盤。

 何せ、主人公の特徴が薄いんですよね。主人公になり得るくらいの特徴がない。棚からぼたもち的な登殿で、何の努力もせず周囲に流されるままの主人公。幼い頃のたった一瞬の逢瀬に夢見てしまう世間知らずさ。幼馴染みの再会恋愛話は私の大好物だけど、今回は刺さらないな〜と思ってました。

 あせびのこと別に嫌いなわけではないけど、どうして好きになれないんだろ? と思わず考えてしまうほど。きっと、自分の意思で行動することがないからだと思います。若宮のことを好きになったなら、恋を叶えたいと思ったなら、顔を赤く染めるだけでなく行動に移してほしい。勝手に憧れて勝手に落胆してそれでも希望は捨てきれなくて、でもそれって、努力した女がするから美しいんでしょ?

 結末を知っているので、どうしてもあせびに対して強く出てしまうな。私は強い女が好きなので……。

 

 むしろ主人公よりも、キャラが立ってる他の后候補たちのが惹かれましたね。夏や秋の君の方が自分を持ってるから好感度高い。

 個人的には真赭の薄が好きです。読み進めるほど好きになる。

 

まるでジェットコースターのような 

 大人気小説シリーズ、まさかこんな感じで終わるわけない、と思ってましたが、予想以上でした!

 おや? と思った瞬間に、急にガラリと物語の雰囲気が変わっている。そこからはもう、怒涛の勢い。ジェットコースターかよ!

 以下、読了後の新鮮な感想です。

 この小説、わりとコロコロ視点が変わるからちょっと読みにくいなって思ってたんですよね。それが、まさかこうなるとは……!

 最後の方、あせび視点が少なくなるの、めちゃくちゃ怖くなかったですか?? まあ1番怖いのは、告白シーンなんですけど……。

 

后選びの行方

 若宮、お前〜! の気持ちになってしまうの、仕方ないと思う。もっと早く現れて、取り返し付かなくなる前になんとかできたんじゃないのって思っちゃうもの。満を辞して、だったけどさぁ……もう遅いよ……。

 まあ、事件が起こってからじゃないと探偵は現れないんですけど。ミステリーの矛盾!

 

 正直あせびのことを引きずりながら最後まで読んでたんですけど、二人の信頼関係はとても良かったです。ラストも良かった。最初の話が最後に繋がる話、私大好物です。

 さっきも述べたんですけど、真赭の薄、めちゃくちゃ良くないですか!?!? 最後で本当にイチ推しキャラになってしまった。これからもぜひ頑張ってほしい。

 

どんでん返しという紹介

 私は読む前からこの小説のことを知っていて(何せ人気シリーズ!)、後半からのどんでん返しがすごい、ということも知っていました!

 でもその情報を知りながら読むと、怪しい人物は1人に限られるんですよね……。もしかして、この人、何かあるんじゃ? の気持ちで読んでしまうという。何も知らずに読んでたら、より一層衝撃を受けていたことでしょう。それが少し、惜しいような気もする。

 

 とはいえ、めちゃくちゃ楽しかったです! 続きのシリーズも読んでいきたい!